新規参入ブランドながらハイエンドの専門店とマニアからやたら評価の高い Westminster Lab にはセパレートアンプの Quest(プリ)と Rei(モノパワー)のイメージしか正直ありませんでしたが、
意外や意外? 同社は実はオーディオ用USBケーブルからスタートしたようなんです。
Quest と Rei は実は以前お借りして聴いたことがありまして(動画につき音量ご注意ください)、その際今回と同じアナログXLRケーブル3機種も送られて来たのでもちろんそれらを繋いで聴きましたが、残念ながらその時は同社純正の電源ケーブル(Quest と Rei に付属)がありませんでした。
が、今回はこの通り
その付属電源ケーブル(単品で買ったらきっと高い)も一緒にお借りできたので、
「プリ・パワー、電源ケーブル、ラインケーブル、全て Westminster Lab」 で試聴できちゃうわけです(総額は正直考えたくない試聴ではある・・)。
ともあれ、早速 アナログ XLRケーブル比較試聴を始めましょう。
まず最初に2機種。左が ULTRA、右が STANDARD。
聴くのは歌曲のライブ録音。
ところで。今回我が国では無名に等しい(失礼)Westminster Lab のケーブルをお借りしたのは、
同社ケーブルに採用される【変則ツイスト】と、【シールドに対する独自の考え方】にとても興味を持ってしまったからです。
詳しくは 輸入元であるブライトーンさんのHP をお読みいただきたいのですが、
●電磁気学的な見地から導体を規則的にツイストさせるケーブルは KIMBER KABLE を始め例に事欠かないのは御存知の通りながら、Westminster Lab によれば「規則的なツイストはケーブルに高い静電容量を発生させるだけでなく、ねじれ角を単一にすることで特定の周波数に特定の共振を発生させてしまう」。・・・って、エッ??
こんな問題意識ってほとんど聞いたことないですよね? そしてそれが本当なら由々しき事態であることは間違いない。で、同社独自の変則ツイストはこの問題を解決すると言う。
●加えて、シールド。シールドの為に用いられる素材は一般にアルミ、銅、錫、マグネシウムといった金属ですが、同社によると金属製シールドは電磁波を吸収してシステムにフィードバックされ、接地してしまうと。システムが予期せぬ形で接地してしまえば必然的に予期せぬノイズが発生する可能性が生じるので、これまた非常に由々しき事態。
なので同社はシールド用に金属を使わない(!)。上記した弊害が生じないカーボンファイバースリーブを(どうやらオプションという形で)シールドとして採用する。。
カーボン系のスリーブ? 有名どころでは Acoustic Revive が CSF という、ポリウレタン糸に製造限界までカーボン粒子を含侵させたメッシュを単品販売し、同社のケーブル(一部を除く)の被覆として採用もしていますよね。だからカーボン系のメッシュ自体は今までにもケーブルで使われたことがある。・・しかし同社も CSF だけをシールドとはせず、主に銅をシールドとして使用している。
またあまり知られていないところではかつての 米NVS が上級機に 銅とカーボンのハイブリッド素材をメッシュとして使っていましたがそれも銅は使っていたわけだし、何より(最後の Vシリーズ以外では)金属パウダーを振動制御兼電磁波シールドとして充填していたからこそ NVS のケーブルはあんなに重かった笑。ノンシールドというのはさほど珍しくないが、シールドをするのに金属を用いないというのは珍しい・・。
・・俄然興味を持ってしまうのは私だけではないハズ。
というわけで、じゃあ実際 Westminster Lab のケーブルはどんな音がするのか?聴いてみましょう。
・・えーと。これは 1.0m だと税別 375,000円のケーブルですよね。十二分にお高いケーブルなので良くて当たり前と言ったら身も蓋もないですが実際良い笑。聴き慣れたこのCDはバリトンとピアノ、2人しか演奏家がいないのでそのぶん定位と各音のライブ空間への拡がり方がフルオーケストラと比べると格段にシンプル。なのでオーディオ的な欠点をごまかせない、再生には厳しい録音なわけですが、
STANDARD が位相を狂わせるケーブルでは全くないことが、これを聴いて判ります。絶縁が粗悪なPVCだったりするとここらへん露骨に狂うんですが、Westminster Lab のケーブルは真っ当にテフロン使ってるのもあるんでしょうね。バリトンとピアノの音像定位にも、バリトンとピアノがホールに拡がりながら減衰してゆく様にも不自然さがない。そして質感がマイルドなのがいい。
では次。ULTRA。
・・いきなりホールが静かになりました。
加えて、バリトンとピアノの音像サイズがキュッと小さくなる。STANDARD のときはこれに比べるとかなりビッグマウスでしたね。正しいのはこちらでしょう。
空間もスピーカーの外側に拡がったし、上下にもググっと伸びてる。特筆すべきは各楽音の質感で、解像度が上がったのは明らかなのにエッジが立たないどころか、バリトン・ピアノそれぞれの艶と潤いが増している。・・これ、ライブ会場の聴衆は酔っただろうなあ羨ましいなあと思わせる。
これだけ違うなら STANDARD と聴き比べて ULTRA を選ばない人はいないでしょうね(^^;)。どれどれ値段は? って2倍!? 1.0m 税別 750,000円かい・・!
うーん。。率直に言って 1.0m でこの値段なら JORMA の ORIGO も考えてしまう。率直過ぎるけど。ただ、JORMA よりウェットな質感なのは大いに魅力。定位と音場等を中心にいつか対決させねばですねこれは。
次回、カーボンファイバースリーブ搭載の ULTRA-C と ULTRA を比較試聴します。結果やいかに。猛暑が早過ぎてスイカも早美味いのはいかがものか。S田でした。