2022年4月4日

Stillpoints:Ultra SS V2 対 Ultra II

Stillpoints:Ultra SS V2

さっきツイッターを覗いたら、今まで何度も繰り返されてきた「原音再生とは何か?」っていう議論が界隈で再燃というか変奏されてましたが、

オーディオファイルが再生する音源はアナログにせよデジタルにせよ「アルバム」単位が基本なわけですよね。で、じゃあ例えばポップス歌手の誰それの東京ドームライブアルバムにおける「原音」とは何かと考えると当然、そのとき東京ドームに鳴り響いていた音がそれであるハズですが、

その音って歌手の生声じゃないですよね。PAを介して出た音笑。で、そのアルバムの音について判断をする主体はざっくり言って6つある。敢えて噛み砕いた言葉で言えば 歌手、PAやってる人、聴衆、録音している人、録音をアルバムに仕立てる人、そしてアルバムを買って聴く人。そしてその6つの主体がそれぞれに考える原音を完全に客観的に比較・判断できる神様がもしいたとしたら神様はきっとこう言うでしょう。「6つとも違う音してる」と。

PAを介さないクラシックの演奏会であれば単純に言って主体の数が5つに減るだけの話。しかしポップス歌手のライブでもクラシックの演奏会でも、聴衆の席がどこかで音は変わる。そしてアルバムを買って聴く人がどういう再生環境と再生機器で聴くかによっても当然音は変わる。

で、オーディオファイルが議論を繰り返す「原音とは何か?」は、オーディオファイル的には上記した最後の段階が直接に関わるわけですが、上記全段階に関してどういう経験をしてきたか、あるいはどう考えるかがオーディオファイルによる再生環境と再生機器のチョイスに影響を及ぼさざるを得ない。

「原音」について論じるうえでは、最低限この事実を共通認識にしないと時間の無駄だと思いますね。そんなことお前なんかに言われなくてもわかってるよという声が聞こえますがその割にこの事実を踏まえない議論が後を絶たない笑。

右が前回聴いた Stillpoints:Ultra II。
そして左が今回新たに聴く同社の Ultra SS V2。

閑話休題。前回に引き続きインシュレーターの試聴をしましょう。

左の Ultra SS V2 の方が背が低い。

てっぺんにある機器との接触部分(右の丸いやつ)を取り外した Ultra SS V2 。

左のやつをちょっと拡大。長方形をしている可動部が縦振動を横振動と熱に変換する。

Ultra SS V2 と Ultra II をひっくり返すとこんな感じ。
御覧の通り、右の Ultra II は底部にも縦振動を横変換・ 熱変換する可動部があるが、左の Ultra SS V2 底部には無い。

ではまず、Ultra IIでCDプレーヤー(Sonneteer:Bronte SACD) を3点支持した状態で

このCDから聴きましょう。

・・まあこの状態で前回も同じCDを聴いてるんですが、録音空間を満たす空気がピアノの打鍵とバリトンの発声で振動し減衰してゆく様がやはり実に精緻に描かれます。じゃあ次、下位機とは言えどもインシュレーターとしては十分に高価な Ultra SS V2 による3点支持にすると?

空気どうこうよりもまずピアノの音像が左右に肥大化したことに気がつきます。加えて、バリトンとピアノの音像が Ultra II のときより前後方向の立体感を失って平面的になってしまった。・・上位機種から聴くもんじゃないなあ(^^;)。

じゃあラスト、CDプレーヤーの底部四隅に元々付いている脚で支持したらどうなるんでしょ?

嫌ですねーっ今度はピアノの音像が更に左右に拡大とかじゃなく、いかにも左右両チャンネルの各スピーカー「から」音が出るって感じになった笑。音離れが悪いというか、ステレオイメージを形成できていないと言うか。Ultra SS V2 がどれだけ凄い仕事をしていたかということがよーくわかってしまった(^^;)。

いや実は前回のブログを投稿した後、アンダンテラルゴのTMDのポリマーで全接点を一生懸命処理してたんですがそれがやっと昨日終わったんですよ。前回よりあからさまに S/N から空間表現力から向上したもんだから前回より違いが断然判り易くなってる。かがんで作業を続けたおかげで持病の腰痛が悪化したけどその甲斐があったというもの。しかし喜んだのも束の間、幸か不幸かアンダンテさんから TMD のパワーアップ版が出るという噂を耳にしてしまいましたがね・・。

前回も聴いたこれはどうだろ?

面白い。

今度は逆に

(1)四隅の脚 

(2)Ultra SS V2

(3)Ultra II

の順で聴いてみたんですが、

樹脂製の(1)が一番、金管の金属臭が強かった。無駄にケバくて強い。対してオール金属の(2)で支持した方が演奏会で聴くトランペットの柔らかい質感になる。念のため書いておくと「プロが吹くトランペットの」ですからネ。つまり、小学校の吹奏楽部で私が吹いていたトランペットの音は(2)ではなく(1)です。へたくそ故に口をのべつまくなしに強く押し付けて吹くせいで、ミュージックエイトの楽譜を1曲演奏した後そこは妙に義理堅く必ずマウスピースの丸い跡を唇に残していたあの私のトランペットの音=原音に忠実なのは(1)であると断言していい。

で、それが(3)になると(2)では音の形が視力1.0で見たようだったチェロ・コントラバスが視力2.0で正しく解像されるし、金管木管各楽器の音色と質感が実に精緻に描き分けられるものだから、ここんとこずっと室内楽の盤ばかり聴いていた私をして楽器の種類の多さはやはり音楽表現の豊かさに結びつくことを思い知らせ、交響曲もまた聴こうという気にさせるのです。

次回は Bronte SACD お得意の古い録音で比較試聴するとしましょう。Amazonにピップエレキバン MAX200(24粒入り)をまた注文した S田でした。